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ヴァナディール・コンプレックスEP:00
【序章】

 女神アルタナに祝福されし土地、ヴァナ・ディール。
 この地において、幾つかの種族に分かれた人間たちは、太古より獣人と呼ばれる異種族たちと争い、大きな戦渦の中で翻弄されて来た。
 先の大戦が終結し、危ういながらも平安を保ってきた今日、三大国サンドリア、ウィンダス、バストゥークの冒険者たちは、三国のクロッシング・ポイントであるジュノ公国など、独自の異文化を育む広範囲の地域に浸透し、各々の生活を様々な形で営んでいる。
 冒険者たちは誰よりも強くなることを夢見て、数名のパーティーを組んでは安全な街を離れ、時には遠く離れた僻地まで、幾日も鍛錬に出かけて行く。
 また、クリスタルの属性を利用して作る、装備品や工芸品、調理品の職人として、腕を磨く者もいた。
 街にはそれらを売り買いするバザーや、国営の競売所などがあり大層賑わっている。

 さて、ここはそんな賑々しい三大国のひとつ、サンドリアである。
 エルヴァーン族(※1)の国王が長く国を治める、多くの冒険者を輩出している王国だ。
 いかにも堅牢な城壁に囲まれた北側の一の郭には、国王の住まうドラギーユ城と大聖堂が聳え立っている。足元の城下町は、増築された迷路のような城壁の間に、生活に必要な全てが整い、庶民の多くが住居も構えていた。
 北西側にはジュノ公国との間を巡航する飛空挺の港や、職人の集うギルド街もある。夕刻になれば、夕陽を背に受けた飛空挺が、離着陸する雄大な様を眺めることが出来た。そんな町並みを、まだ剣の振り方もおぼつかない初心者から、幾つものジョブを極めて来た経験者たちまで、雑多な人が行き交っている。
 だが今、サンドリアでも最も静かな広場に、明らかにただの冒険者とは違う、見慣れない姿の二人連れがたたずんでいた。
 一人の男は見るからに背が高い。
 この国を治めるエルヴァーン族は皆、背が高く大柄な体型の種族だったが、負けず劣らずの長身だった。細身だが胸板は厚く、長い手足と身体を包む黒衣は、たたずんでいるだけで妙な威圧感がある。
 顔の造作はヒューム族(※2)のようだが、ヒュームには珍しい金属質な色の髪を長く伸ばし、黒い革製のコートは小鎧(こざね)や帷子(かたびら)が仕込まれている様子もなく、肩当だけが付いたシンプルなものだ。
 右手には、鍛冶ギルドの名だたる職人たちも興味を示しそうな、異常に長い両手刀を携えていた。
 またもう一人は背は低めで、一見少女のような可憐さの感じられる顔立ちをした青年だった。
 眩しい金髪を盛大に逆立てた髪型は、各国を巡業する雑技団員かと思われるような奇抜さだった。巨大な両手剣を背のホルダーに差し、数々の戦闘を渡り歩いて来たのだろう年季が、左肩の肩当やブーツ、グローブなどの簡易な装備に刻まれている。
 二人とも黙っていれば端整な面だったが、表情は決して愛想のいい感じではない。
 城と大聖堂を見上げる広場の中央に、この異色な二人は長い間、険悪な様子で向かい合っているのだ。
 知人同士の喧嘩なのか。それとも似た雰囲気がするので、兄弟などの肉親か。
 大聖堂へと向かう町の娘たちは一様に、二人を物珍しげに盗み見ながら広場を通り抜けた。女神アルタナに敬虔な祈りを捧げに行くのに、頭からはその美形の青年二人の姿が離れなかった。
 数時間後、午後の祈りを終え、夕食の支度をするために自宅へ戻ろうとする彼女らが目にしたのは、先程と険悪さは変わらず、広場中央のベンチに並んで腰を下ろした、二人の姿だった。
 この広場には、初心者の冒険者が何をしていいのか分からず、半日たたずんでいることも珍しくない。
 頬を染めながら、声を掛けようかどうしようか迷っていると、二人を眺める騎士が見かねて歩み寄るところだった。女たちは己の後手を後悔すると同時に、その騎士の正体に気付いて、騎士の動向を見守ろうと遠巻きにしていた。
 丁寧に磨かれ、白く輝く甲冑は、このサンドリア王国と王族を守る神殿騎士団のものだ。姿勢よく背筋を伸ばし、颯爽と歩む騎士の整った面は、左半分を大きな鋼鉄製の眼帯で頬まで覆われていた。明らかに傷を隠すための覆いである。
 まっすぐな明るい赤毛の隙間から、周囲に配る右目の視線には厳しさが滲み出ていた。
 広場の二人組みを見る目は油断無く、剣帯に手を掛けて、まっすぐに険悪な二人へ足を進めた。


※1「エルヴァーン」
プレイヤーが選択できる種族の一つ。男女ともに、端正な顔立ち、長い首と尖った大きな耳を持ち、長身な一族。力や精神力、魅力に長けた種族である一方、命中・回避・知力・MPなどは他の種族に劣る。ナイト、戦士、暗黒騎士などのジョブに向いている。
※2「ヒューム」
プレイヤーが選択できる種族の一つ。男女ともに中肉中背、いわゆる人間と同じ姿形を想像していただくとよい。全ての能力に平均的であり、苦手とするジョブがない一方、ジョブのスペシャリストとしてやっていくには、装備などで補う必要が出てくる。
06.12.15(了)
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