この地に、そもそもは異世界の住人であるセフィロスとクラウドが降り立ったのは、たった三日前の穏やかな春の陽射しが清々しい午後のことである。 二人は見知らぬ土地に戸惑う間もなく、神殿騎士団のクリルラと冒険者エレオナに手を貸され、寝起きする場所も得ることができた。 二日目からは街の外に出て獣やモンスターを狩り、それで得た素材を金銭に換えることも憶えた。 この世界は、思った以上にマーケットが発達している。 街の至るところで行われる『合成』と呼ばれる製造作業も、ちょっとした雑貨から、布や革、骨、金属などを使った装備品、宝飾品、剣から弓や短銃にまで至る武器、食品、薬品、家具などあらゆるものが生み出されていた。 クラウドは朝から賑わう街を歩き、通りの露店でセルビナ産のミルクと朝食がわりの葡萄を買った。立ち話を始めた露店の店主曰く、その奇抜な金色の髪型に目を止め、この街に降り立った日からクラウドら二人のことは、町人たちの噂になっているというのだ。 「いやあ、なんだかお客さんの髪型が、チョコボが歩いてるみたいに見えるって話でね」 露店主は大きな口をあけて笑い、クラウドの頭を指差した。 「チョコボ? いるんだ、ここにも」 「そりゃあ、いるさ。競売裏の城壁一枚越えたとこに、厩舎があるよ」 ミルクのビンを露店に戻し、果物を咀嚼しながら言われた場所に向かってみた。 競売横にある通路から分厚い城壁を潜った先に、チョコボを運動させるための柵のついた広場と、二階建ての厩舎があった。厩舎の周辺には、チョコボが好物とする野草を売る冒険者がひしめき、意外な賑わいを見せている。 厩舎に入ると、一時的にチョコボを借り受けるための受付があった。 「チョコボ、借りられるんだ」 「はい。お客様はチョコボ免許はお持ちですか?」 「免許……?」 「ええ。免許がなければチョコボをお貸しすることはできません」 「そんなのがあるんだ」 「最近はチョコボを手荒に扱う、不届きな人もいるもので、免許をお持ちでない方には、お貸ししないということになってるんです」 「どこに行けばその免許取れるんだ?」 「さあ……実は免許取得の資格は、明確じゃないんですよね。ただ免許を発行しているのは、当チョコボ保護協会の会長なので、ジュノに行けば何か分かるかもしれません」 エルヴァーンの受付員は丁寧な口調で応対し、待機している貸し出し用のチョコボに目をやった。 「どれもみんな利口そうだね。一日は走れそうないい足だ」 「ええ。お客さんはチョコボを育てたことが?」 「ああ。以前に何代も育てたことがある」 「ではぜひジュノに行って、会長を訪ねてみてください。ジュノまでの道のりは楽ではないと思いますが、ジュノは都会ですし、行ってみて損はないですよ」 「ジュノって……どうやっていくんだ?」