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トライバロジー


 「この変態色ボケ野郎が!」

 まったくもって他人が聞いたら飛び上がりそうな音量と内容の罵倒は部屋中によく響いた。近所に聞き取り調査でもしたら、少なくとも、上下左右の部屋くらいには聞こえていたに違いない。
 救いがあるとすれば、ここがごく一般的な住宅街ではなく、風俗店やそこに勤める女衒や売春婦、用心棒ばかりが住むような、ダウンタウンでも一等、品のないアパートであることだろう。
そのせいで、女とヒモが交わす喧嘩の声などは日常茶飯事。ここでこの青年が一人騒いだところで、何事かと駆けつけてくるような者はいない。
 好奇心、もしくは良心に負けて首を突っ込もうものなら、浮気相手と間違われて銃で撃たれただの、刺されただの、そんな犯罪も多発する街なのである。
 だからこそセフィロスは、いつものように自分から矛先を納めはせず、この日は青年の喧嘩に乗った。
「聞き捨てならんな。誰が変態で色ボケだ」
「あんただ、あんた! 近所に影響されてんのか知らないけどな、どうしてそう毎日ヤリたがるんだよ! こっちの身にもなれっての!」
「毎日ではない。前回お前と寝たのは一昨日の夜だ」
「ヘリクツ言うな」
 要はこういうことだ。
 このアパートに住むようになってからひと月ほど、彼のいうとおり、セフィロスはよく青年をベッドへ押し倒している。
 夕刻にもなればコールガールたちは大通りの客を引き込み、開けっ放しの窓からは情事の音声は伝わり放題だった。
 隣家に住む、いかにもドラッグの密売でもしていそうな、とうの立った男は、かわるがわる歳若い娘を連れ込んで、今も部屋の間の壁を軋ませている。娘を煽る下品な言葉は、壁一枚挟んで聞くと、いかにも安っぽいブルーフィルムの台詞のようだ。
 ここは、そういう場所なのだ。
 他人の最中の声など聞いたところで、セフィロスにはせいぜい虫の羽音程度に思っているのだが、クラウドの顕著な反応を見たり、慌てて窓を閉めたりする様子を見ていると、どうしてもからかい半分でそんな気分になる。
 元々情人と云っていい関係なのだし、遠慮する理由もないので、衝動に従って青年に襲いかかっていた訳だが、どうやら彼はその回数(?)だか頻度(?)だかに、ずっと文句があったようなのだ。
 行為に至れば彼は拒まないし、最中の制止は正直言ってあてにならない。やめろと切なく言われて手を止めて、途中で放り出すなんてふざけるなと説教されたことも幾度か。
 不機嫌そうな表情で拒絶されれば、セフィロスとて無体をするつもりはないのだが、今日は彼の我慢は限界だったのだろう。よせといなす声を無視してベッドに押し倒して口づけたところで、股間に蹴りをくらい、左頬にはパンチが飛んで来た。
「あんた、オレをヤリ殺すつもりかよっ!」
 いや、犯し殺す前にその鉄拳であの世に行けそうなんだが、とはもちろん言わせてもらえなかった。
「さかりのついた犬じゃあるまいし、少しは我慢しようとか思わないのか」
「人間の性欲には周期があるわけじゃないからな。確かに発情期の獣はいつでも交尾したがるが、一年に何度性交するかといったら、人間のが多いくらいだろう」
「そういうこと言ってんじゃねぇっての!」
 きちんとした説明が余計に彼を怒らせたらしい。
「入れられるオレの身にもなれってんだ。あとで痛いは、腰は抜けるわ、回復魔法がなかったら、次の日がどんなだか知ってるのかよ!」
「その割には、いつも色々いうな」
 セフィロスがそう振ると、青年は突然沈黙した。
 彼の複雑な表情を見て、おもわず口元が笑みで歪む。
「もっと。気持ちいい。ニ度目くらいになると、かきまわせ、とか、壊せ、とか。あとは」
 思い出しながら彼の言葉を羅列するセフィロスの声は、わーわーと喚く青年にかき消された。
「尤も、腰を振って強請られるのは嫌いじゃな……」
 わめき声が治まったタイミングを狙って言った言葉は、右頬へ飛んできたパンチに止められた。
「サイテーだ。そんなにヤリたいなら、一日中その辺の壁の穴にでも突っ込んで一人でやってろ!」
 普段なら、どちらかというと無口で表情も変えないクラウドは、顔を赤くしたり白くしたり大層な変化をつけながら、さすがの周辺住民でも眉をひそめるような口汚い罵倒を吐き、セフィロスへと背を向けた。
 セフィロスとしても、そこまで言われる筋合いはないと思う。ことの最中はさておき、青年の方から求めることもあるし、何度も弁解するようだが、疲れてるとでも言えば無理強いはしない。
 これまで人の人生の数倍を共に過ごしている間、ずっと、セフィロスは彼の誇りを傷つけるような誘い方はしてこなかった(つもりだ)。
 自尊心も人一倍、自分が男であるという自覚も人並み以上、彼にとって同性であるセフィロスとのセックスは、常に喜びと同時に、彼の中の葛藤でもあるとわかっているからだった。
 ただ今でもそうやって潔癖な面のある彼は、少し強引に雰囲気でも作って、方向付けをしてやらないと、なかなか行為そのものに至れない。
 そっぽを向いていた彼は、肩越しに横目でセフィロスを窺いつつ、吐き捨てるように言った。
「しばらくは顔も見たくない」
 完全に拒絶する体勢の青年の背に、セフィロスは久しくなかったほどの憤りと、高すぎる彼のプライドを引き裂いてしまいたい衝動を感じた。
幼い頃の彼を初めて手に入れた時のような、ここで逃がしてしまっては一生セフィロスを遠ざけようとするのでは、という不安もほんの僅か。
「待て。聞き捨てならんと言ったはずだ。そこまで罵倒される謂れはない」
 逃げ出すつもりだったのか、玄関の脇のクローゼットを開け、上着を取りかけた彼の手を捕らえ、自分の胸に引き寄せた。
 すっかり大人になっても、セフィロスよりひと回り小さな身体を抱き締めるが、その力は常の数倍でいたわりとはほど遠い。
 力の強さに不穏なものを感じたのだろう、クラウドの顔がさっと曇った。
 そんな表情をしては支配する男の性に火をつけるだけだ、と、セフィロスの良心が彼に無言で忠告する。
「人を変態だの色ボケだの、言ったからには責任をとってもらう」
「何が責任だよ。ホントのこと言っただけだろ」
 あくまで声は強気だったが、取り返せない腕を掴む力に青年の表情が更に硬くなった。
 最初は本当に冗談のつもりだった。少しの間だけ本気で怒ったふりでもして、冷や汗をかかせてやろうという程度。
 だが今は、彼が逃げ出せないくらい壊してしまいたかった。
 

 更なる罵倒を吐き散らし、暴れるクラウドを引きずるようにして再度ベッドに放り投げ、ひっくりかえった彼を押さえ込んで片手でジーンズと下着を奪い取った。上半身はTシャツを着ていたが、肘までめくりあげてそのまま二本の腕をきつく縛り付けた。更にベッドの縁に掛けてあったタオルで、腕を拘束するTシャツとベッドヘッドの柵を繋ぐ。
 この間、僅か十五秒ほどだったろう。
 勢いに飲まれて呆然とした顔をするクラウドは、漸く我に返って本気で抵抗を始めた。古いベッドの鉄柵が、クラウドの力でしなっている。口汚い言葉を吐き続け、全裸にも関わらず靴下だけを残した足でセフィロスを蹴り退けようとする。難なくかわして足首を捕らえ、開かせたクラウドの腿の間に膝をついてベッドに乗り上げた。
「こ、の! 変態! ほどけバカ!」
 何度目かの変態や馬鹿呼ばわりだったか、セフィロスはもう数えていなかった。顔を真っ赤にして本気で怒りを示しながらも、青年の股間のものは僅かに反応している。恐らく怒りによる興奮が原因なのだろうが、揶揄する材料にはなる。
「騒がしいな。縛られて、興奮しているくせに」
「ふざけるな!」
「お前とオレの仲だろう、遠慮するな」
「な、何がだ! バカ!」
 身をかがめて持ち上げた足の内側に強めに噛みついて、そのまま舌で腿まで舐め下ろすと、滑らかでまっすぐな足は顕著に震えた。
「安心しろ。本気で強姦するつもりはない」
「もう十分、強姦だろっ!」
「そういう嗜好がいいのか」
「ちが、う」
 膝の裏をきつく握って上肢の方へと倒せば、自然と腰が浮く。ベッドとその隙間に枕を押し込んで支え、露になった場所に顔を埋めた。
 きつく閉じている場所をじっくりと眺めていると、それを意識したのかきゅっと締まる蕾は、幾度も男が愛撫を繰り返しているからか、薄赤く色を帯びている。
 開いた唇でくわえ込むように覆い、舌先で皺を伸ばすように触れると、掴んだ膝が大きく痙攣した。
「やだって……よせ! よせよ!」
 身悶えて放させようとする青年を、足を掴む指に力を込めることで押さえ込み、尖らせた舌先を侵入を拒む場所へ潜り込ませる。
 濡れた舌を押し出そうと動く肉を掻き分け、閉じる力の集中する場所をしつこく探る。
 くすぐったいのか腰を浮かせ、身を捩るがそのまま続けて幾度かつつき、少し緩んだのを見計らって舌を限界まで挿し入れた。
 舌より熱く、柔らかい内臓に触れて、そこをもっと犯したい欲望が吹き上がった。
 蠢いて抵抗を続ける青年の内部を、かき回すように動かしながら唾液を注ぎ込み、収縮する場所が淫靡に湿るまで根気よく続けると、放置していたはずの青年の陰嚢が張り詰め、陰茎は芯を持って立ち上がってきた。
「気持ちいいんだろう」
「やめろ、くすぐったい」
「嘘をつけ。悪い子だ」
 指摘が本当だった証拠に、足を拘束した手を離しても、もう暴れようとはしなかった。
 口を離した場所に中指を半ばまで差し入れ、指先だけを小刻みに動かしながら、陰嚢に優しく噛み付いた。薄い表皮の中の宝珠をそっと噛み、吸い上げれば、指先がぎゅっと締め付けられる。指先を暖かく包む場所は、そこだけが違う生物のように繊細な動きをしていた。
 上目遣いに青年の顔を窺う。
 双眸はきつい光を帯びて睨み返してくるが、僅かに潤ませた青い目に、セフィロスは一層凶暴な気持ちを煽られた。
 そんな気持ちとは逆の柔らかな動きで、指先を包む器官と陰茎への口淫を続けながら、どうやって彼を引き裂いてやろうかと、乱れた思考が脳裏を巡る。
 確かに青年の言うとおり、今の自分は変態で色ボケかもしれないと、唇の端が我知らず上がっていた。
 ベッドのすぐ脇の壁は、相変わらず隣家の男が軋ませているし、時折娘の嬌声が壁を通してくぐもって聞こえた。少し開けた窓からは、数階下の広場で遊ぶ子供の声や、どこかで怒鳴りあう痴話喧嘩の声も聞こえる。
 そんな喧騒溢れるダウンタウンの中でも、二人はごく慎ましく静かに暮らしていた。外見だけは大人しく見えるらしいクラウドは、近隣のコールガールたちに人気の好青年を演じきっていた。
 彼女たちが裸足で逃げ出すような、扇情的な声を立てさせてやりたい。
「声を上げてみろ。隣家が耳をそばだてるくらいにな」
「ぃやだ……もう」
「ここにいられなくなったら、街を出るだけだ。お前にもオレにも、捨てられぬものなどない」


 緑の木々など殆ど存在しない街では、長くなっていく日だけが春の訪れを感じさせる。夕暮れの陽射しは、酷く汚れた壁や道路を赤一色に染め上げて、幾分ましに見せていた。
 子供たちは家路につき、どこからか夕餉の支度をする匂いがする。隣家の男と娘の行為も終わったのか、喧噪の静まったアパートで、この部屋だけが忙しない呼吸を響かせているように思えた。
 腰を下ろせるくらいの幅がある出窓に、うつぶせに肩をつかせ、後頭部を押さえつけて腰を上げることを強要している。クラウドはシミひとつない尻を捧げるように突き出して、可憐な花のような場所をセフィロスへあけ渡していた。
 赤い陽の光が、繋がる部分を濡らす潤滑剤と体液をひらめかせて、断続的に起こる粘着質な音を、一層淫靡に演出している。
 普段は指一本すら拒む狭い場所に、張りつめきった己を押し込み、引き出す度に縁をまくり上げる。見下ろすセフィロスからすれば、啜り泣くような声を漏らす青年を、犯しているという言葉以外では表現しにくい。
「いい、眺めだ」
 囁く音量の所感をどう感じたのか、クラウドは俯いたまま身体全体を捩らせた。汗の粒を乗せる蠢く背骨の山が、強烈な夕陽により鮮明に浮かび上がり、生々しく肉体を意識させる。
 無意識にずり上がる腕の中の身体を、後頭部の髪を掴み引くことで留め、いたわりの欠片も感じられない動きで突き上げ、乱暴に奥の固い場所を擦り、内臓ごと引き出す勢いで抜く。時折浅く、速く変化をつけても、行為そのものは出し入れを繰り返す、単調なものだ。
 それでもクラウドは息を荒げ、夕暮れのせいだけでなく全身を薄赤く火照らせている。
 白い背中が突然ぶるりと大きく震え、肩越しにセフィロスを見上げて来た。
「どうした」
 問いながら、汗に湿った髪を掴む手を離し、代わりに、窓の桟にしがみついていた手を押さえつけた。手首にはまだTシャツが巻いたままで、自由を与えてはいない。
「声に出して、どうしてほしいのか言え」
 緩やかに下肢を揺らすと、突き出すように上げたクラウドの顎を、溢れ出た唾液が伝う。
「あぁ」
 首筋を這った唾液が、粘った糸を引いて出窓に落ち、途切れた。
「ま、え……」
「前がどうした」
 挿入してから一度も触れていないクラウドの陰茎は、腹につきそうなほど立ち上がり、セフィロスの動きに合わせふるふると重たく揺れていた。先端からは流れ落ちるほど漏れ出して、板張りの床に滴っている。
「出し、たい。もう」
 消え入りそうな小さな声ではあったが、クラウドはセフィロスをまっすぐに見つめて要求した。
「触れてほしいのか」
 今度は無言で金色の頭が頷く。
「後ろも。もっと」
 クラウドが自ら腰を前後に揺らすのに合わせて、大きく弱く、中と外を擦りあげる。そろそろ虐めるのは止めて、セフィロスも終息に向かおうと動き始めると、たがが外れたように短かい嬌声が上がった。
 普段あまり聞く機会のない、クラウドの高い掠れた声はセフィロスの官能を直接刺激するが、要求通りにそうされてしまうと、青年の方が自分を陥れようとしている気がしてきた。
 演技ではあるまいか、と疑問を持って見下ろす。
「クラウド」
 名を呼び、出窓に両手をついて、身を近寄せた。
 声に反応して、横目で見返す目元は上気して染まり、涙が滲んでいた。
「気持ち、いい」
 セフィロスのこめかみに浮かんだ汗がしずくになり、頬から顎を伝ってクラウドの背へ落ちる。
「あんた、でかくて痛いし、回数多いしウザイ、けど」
 まったくもって酷い言い様である。
 掠れた声で漏らすつぶやきの続きを聞こうと、セフィロスは金色の頭に顔を近寄せ、目の前の首筋を舐めあげた。
「ずっと、こうしていれたら、いい、のに」
 クラウドは消え入る声で囁き、突然息を飲み込む。
 肩をぶるりと震わせ、次の瞬間前を包んだ手の中に熱い滾りが吐き出された。
 どんなに泣きわめいても、喘いでも、いつも達する時は、こうして静かで。
「クラウド」
 手酷く扱ったことに、気取らせぬほどでも疑ったことに今更罪悪感を覚えた。
 汗に濡れた身体を抱きしめ、自身は達せぬまま暫く身を寄せ合っていた。

                        *

 食品や日用品の買い物から帰って来た、クラウドの様子がおかしいことに気づいたのは、その騒動から二日ほど後の午後のことだった。
 スーパーの紙袋をキッチンのカウンタに置き、中身をフリーザーに移す様子もなく、立ち尽くして考え事をしている。
 声をかけずにいたセフィロスは、クラウドが袋から缶ビールを取り出し、突然リップルを引き開けて呷るのを見て、少なからず驚き、灰皿に置きかけた煙草を持つ手が止まった。
 クラウドは明らかに怒っている。
「どうした」
 視線も合わせず、もう一口ビールを飲み込み、ゆっくりとセフィロスの方へ顔を向けた。
「あんたのせいだと思うけど」
「それは、すまなかった」
 先ず謝ったのは、明らかにその方がいいと感じたからだが、彼の怒りの理由に察しがついていた訳ではない。
「買い物から帰ってきたら、下でおねーちゃんたちに会ったんだけど」
 クラウドのいう『おねーちゃん』とは、このアパートに住むコールガールたちのことだ。若い未成年の娘から、老女手前の熟女まで数多くいる。
「お金いらないから、あんたも混ぜて4Pしようって誘われた。どうする?」
「……丁重に辞退しろ」
「んで、上がってきたら廊下で隣のおっさんに会ったんだけど」
 恐らく先日も娘を連れ込んでいた、隣家の男のことだろう。
 嫌な予感がして、セフィロスは心中で身構える。
「十万ギル出すから一度寝てくれって言われた」
 幸い、突然鉄拳が飛んでくる様子はなかった。
「どう答えたんだ」
「ふざけんなって一発殴ったら、伸びた」
「廊下にか」
 もう一口、可憐にも見える口がビールを含む間が怖かった。
「うん。ほっといていいか?」
 首を少しかしげて笑う顔が、やはり怖い。
「後でオレが下に捨てておく」
「いろいろ任せた。オレ、シャワー浴びるから」
 買い物したものをフリーザーに移すのはやっておけ、という無言のプレッシャーだろう。さっさとキッチンの端で脱いだ服を、寝室のベッドへと放り投げ、バスルームへ向かう引き締まった背中と尻を見送った。
「読み違えたか」
 バスルームの扉が完全に閉まってから、セフィロスは思わず声に出して呟いていた。
 恐らく二日前の騒動は、他の部屋の住人に聞こえていた。
 むしろ聞こえるようにセフィロスがわざとそうしたのだ。
 他の街───例えばごく普通の会社員たちが住むような住宅地や、小さな田舎の村であれば、周囲に二人の関係が知れた途端、無言の重圧で追い出そうとするだろうが、この街は違う。
 クラウドがカウンタに置き去りにした紙袋から、食材をフリーザーに移しながら、セフィロスは思案に沈んだ。残念ながら、これまでとは全く異なる理由で、引っ越しを考えある必要がある。
 次に住むならどこがいいか、クラウドをどう宥めるかとぼんやり思案する端で、コールガール二人も入れて四人で行う行為とはどんなものなのか、少し想像し、うんざりしたセフィロスは、眉根を寄せて、存在を忘れて短くなった煙草を吸った。


07.05.18(了)
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※トライバロジー=摩擦工学
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